正月14日、四天王寺六時堂で‘どやどや’が行なわれた。四天王寺では正月元旦から14日にかけて2週間、修正会が行なわれる。‘どやどやはその結願の日に行なわれる祭り。
どやどやは、紅白のボンテンに導かれた裸の若者が六時堂上で押し合い揉み合って、天井から降る牛玉の札を奪い合い、獲得した札の多少によって勝敗を決する行事。午後2時20分ころから保育園児、同40分ころから高校生、中学生の混成チームが2組、順次札の争奪を行なった。青空がのぞく好天に恵まれて、四天王寺境内は熱い熱気に包まれ、新年の門出とした参詣者も多かった。
‘どやどや’は天王寺村と今宮村の若者が六時堂の壇上で押し合い、揉み合って天王寺村が押し勝つとその年の豊作(天王寺村)を得て、今宮村が押し勝つと豊漁を得る行事。その際、六時堂前で牛玉の札を撒き、これを参詣者がどやどやと競い合って奪い合ったことから、この祭りを‘どやどや’と呼ばれるようになったもののようである。
農漁村の都市化などによって参加する若者が減るなどして今行なわれる学生らの参加する‘どやどや’のかたちができた。‘どやどや’の参加者は総勢1000名を超えるという。今なお‘どやどや’は大阪の一大行事、奇祭として名をなしている。
祭りの進行もなかなか軽妙で楽しく、次第に参詣者が祭りに引き込まれていく。この辺りにも祭りに対する大阪人の情熱といつも大衆をわらかす浪速のおもろさが感じとれる。大阪が見えるよい祭りである。
裸祭りと呼ばれる日本の祭りは、正月の修正会や夏越の祭りなどの機会に行なわれることが多く、裸体の若者が岡組、浜組みなど二手に分かれて押し合い揉み合い、その勝敗によって五穀の実りや漁の豊凶を占う場合が多く、綱引きなどと同様に年占行事として発展し、続けられてきたものであろう。
難波八坂神社(大阪市天王寺区元町)の綱引きは祭神・素盞鳴尊が八岐大蛇を退治した故事にちなむといい、世間には‘難波の綱引き’として名がある。昔は四天王寺の‘どやどや’と同じ正月14日の神事であった。一般に、綱引きは奈良県など近畿一円の正月行事として斎行される綱掛祭と深い関係があると見られかつ、年占神事と結びつく例もある。
‘難波の綱引き’と‘四天王寺のどやどや’は浪速の古社と古寺が競って年占行事を行なった名残とも解せられるが、今日‘難波の綱引き’(平成26年は1月19日)は日を違えて行なわれているようである。
西大寺会陽(岡山県)は、旧正月14日の修正会結願の日に行なわれる。競子が二つに分かれて玉を奪い合う玉取祭(玉せせり)(福岡県)は正月3日に行なわれる祭り。いずれも裸体の神事である。西市辺・薬師堂(滋賀県)の裸踊りや守山の火祭り(滋賀県)なども修正会とのかかわりのある裸祭りとみてよいだろう。裸体に、穢れを祓い落とすという中世的な理解があるのだろう。−平成26年1月− |