岡山 西大寺会陽(西大寺の裸まつり)−岡山市西大寺中−
 岡山市の東部、吉井川が児島湾に流入する少し上流の右岸に西大寺観音院という真言宗の寺がある。
 同寺の修正会の結願の日に行なわれる会陽えようは、締め込み姿の男子によって宝木しんぎの争奪が行われる裸祭りとして全国にきこえた伝統的な民俗行事。
 平成19年2月17日、会陽裸祭りが開催された。吉井川の河畔で午後9時からはじまった冬花火大会の終盤が近づくと、今度は川端の観音院本堂の大床に締め込み姿の闘士の集結が始まる。監督を先頭にして数人或いは十数人にもなる集団が次々と入場し、わっしょい、わっしょいと掛け声をかけながら本堂周りを周回しウォーミングアップ。宝木が投下される大床の周辺では早くも場所取りの争奪がはじまっている。次第に膨らむ人の波はやがて大床を埋め尽くし、本堂周りの階段が見えなくなり、人の波が境内を覆いつくす。その数、約一万人にもなろうか。やがて大床上の人の波が左右に揺れ始め、両手を高々と上げ、肉体がぶつかり合い、押し合い、湯気が立ちのぼる。天上から清水がまかれる。さらに押し合いは激化し、湯気で見通しのきかなくなった大床の壇上で宝木の投下を待つ闘士たち。
 深夜12時、大床を照らしていた照明が消えた。宝木の投下。宝木の行方を追って一つ、また一つ人の輪ができて力闘が続く。うたかたの泡のごと消えまた浮ぶ人の輪。こうして宝木争奪の力闘が延々と続き、宝木は取り手によって密かに所定の場所に届けられる。真贋の検分が行われ、やがて福男が誕生するのである。
 博多祇園山笠婿押し玉せせり鬼夜など裸まつりは九州でよく保存されているが、冬期に行われるものが多い。かつその由来も宗教行事とむすびついているものがほとんである。しかしなぜ、締め込み姿であるのかはっきりしない。肉体を神聖視し、緊張感が増し、事故を防ぐ意味があるのかもしれない。−平成19年2月17日−