小豆島の秋祭り(亀山八幡宮)−小豆郡池田町− |
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小豆島の池田湾にさわやかな風が吹きわたる。緩やかに弧を描く海岸線の西端で、霊峰「西の滝」が晴れわたった秋空に麗姿を映している。そのはるか東方で、細く長く延びる三都半島が瀬戸内海を備讃瀬戸と播磨灘とに二分する。
祭りの日、三都半島の最先端の港町「神ノ浦」を発った一艘の舟が、池田湾のかなたに見え隠れしながら近づいてくる。目を凝らすと、チョーサ(太鼓台)を乗せた豆粒ほどの小舟が、若衆の櫓櫂に操られ右に左に大きく傾きながら湾を北西に航行している。やがて東に方向を変え、城山の麓・浜条の浦に9時過ぎに着岸。万雷の拍手歓声で迎えられた。舟からチョーサが降ろされ、町内の各地区から参集するチョーサとともに亀山八幡宮に向かう。
■ 亀山八幡宮(写真右)は城山の麓にある古社である。鳥居をくぐり坂道になった参道を往くと阿吽の獅子が随神門を護っている。広い境内に重厚な本瓦葺の唐破風の拝殿が建っている。クスやイブキの大木が茂
る参道は、立錐の余地なく氏子や観光客がチョーサの練り込みを待っている。チョーサが一台、また一台と境内に向かって坂を登ってゆく。
チョーサの練り込みが順次、参道や境内で繰り広げられている。練り込みに所ところの作法があって、小豆島のそれは、90人ほどの担ぎ手が高々と差し上げたチョーサを下ろす瞬間にチョーサを地上すれすれまで倒し、次に倒れたチョーサを勢いよく起こす反動を利用してすかさずチョーサを反対側に倒す。この荒業、力技が二度、三度繰り返される。誠に勇壮なものである。チョーサの櫓の中に太鼓が縦方向に据えられ、乗り手の子供が太鼓をたたいているわけであるが、宇宙遊泳の気分であろう。練り込みの後、境内で稚児の踊りや槍を持ち唐櫃を担いだ奴踊りが奉納された。奴の頭に鉢巻ならぬオリーブの葉が締めてあるのも小豆島ならではの光景。祭神様もよしよしとうなづいておられることであろう。 |
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■ お旅所は浜条の広場にある。広場の背後は、石垣を5、6段積み上げた幅60メートルほどの石桟敷になっている。大変、珍しいものである。八幡宮の境内を下ると、すでに広場では森本長太夫社中による「伊勢大神楽」が始まり、鈴の舞、四方の舞、放下芸(かけあい漫才)、剣の舞、吉野舞、傘の曲、献燈の曲、神
来舞(しぐるま)、魁曲と順次奉納された。舞は獅子舞、曲は軽業などを主体として何れも洗練された伝統芸能である。社中は、もともと家やかまどを清めたり、伊勢神宮のお札を配り、各地を巡回されているようである。「小豆島へは、毎年7月に巡回があります。大阪から社中の来訪があると家へ来てもらってお払いをしてもらいます。親方とは長い付き合いです。」と地元の人。地域に密着した伝統芸能が滅びゆく現在、大神楽は大変貴重な存在である。伊勢大神楽に続いて稚児の舞が奉納された。
13時を過ぎいよいよ神輿、チョーサが踊り場に入場。大練りの始まりである。次々に、都合13台のチョーサが大技を披露。振り子のようにチョーサが二度、三度反転するたびに、広場に土煙が立ち、祭りは最高潮に達する。
秋祭りは池田町の人々の原風景。遠く故郷を離れた人々も10月16日の祭りの日には帰郷する人も多いという。-平成16年10月-
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