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福岡 |
筥崎宮の放生会−福岡市博多区、東区− |
日本三大八幡宮のひとつ筥崎(はこざき)八幡宮の放生会(ほうじょうや)が始まった。放生会は博多三大祭の一つ。9月12日から18日まで、一週間の日程で連日、神事や博多にわか、豊前神楽、和太鼓、博多独楽など「神にぎわい」がある。例年、奉納される筑前博多独楽の家元・筑紫珠楽の冴えた曲など神にぎわいを楽しみにしている人も多いという。
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筥崎八幡宮 |
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おはじき |
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チャンポン |
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駆け込み |
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新しょうがを買う人 |
参道や広場に孫店などを含め千店余の露店や見世物小屋などが建ち並ぶ様は壮観。この時期、露店は、暦に従って全国から筥崎宮に集まるという。150万人とも200万人ともいわれる参拝客で境内は連日、深夜遅くまで賑わう。
■ 福岡の郷土玩具は多種多様であるが、放生会に並ぶ玩具の代表格はチャンポン(ビードロ)とおはじき(写真左)。博多ではビードロをチャンポン又はピンポンなどという。吹くと出る音を商品名としたものである。大小さまざまなものがあるが、浮世絵のビードロを吹く女を彷彿とさせるような綺麗に絵付けされた小さなものも並んでいる。今なおビードロが玩具として親しまれているところは、長崎と博多くらいであろう。おはじきの方は、絵柄がひとつとして同じものはなく、随分凝ったものである。もともと土でできていたようであるが、金属ないし特殊な樹脂を加工したものなど実用に耐える堅牢な素材が使用され、絵柄に素朴な美しさがあって人気がある。太宰府天満宮のウソドリ、崇福寺の絵馬、チャンポン、博多おはじき、博多独楽、瀬高のきじ車、英彦山のガラガラなど福岡にはよい玩具が多い。
■ 筥崎宮の放生会は、すでに10世紀には行われていた記録がある。放生会は、全国の八幡神社で生命を慈しみ殺生を戒めるという趣旨から行われている神事。筥崎宮では、祭りの期間中、石堂(御笠川)と多々良浜の間の漁を禁ずるものであったが、今では祭りの最終日にクス玉からハトが放たれる神事が祭りのクライマックスになっている。
■ 筥崎宮の放生会は、幕出しという古風を伝えている。かつては、町内会や大店が連れ立ち、料理一式を長持に詰込み、長持歌を唄いながら筥崎へやってきて、境内の松林に幕を張り、日がな一日飲食を楽しんだ。これを放生会の幕出しといった。幕出しに備えて、博多では「放生会着物(ほうじょうやぎもん)」といって、奥方や娘の着物を新調する風があった。幕出しが終わると、葉つきの新しょうがを買ったという。新しょうががいわば放生会で幕出しを行った(着物が新調できた)証拠になったわけである。呉服屋は、年商の半分以上を放生会で売り上げたという。今日、松林は消え幕出しの風景を見ることもなくなったが、葉付き新しょうがは廃れることなく放生会の露店で売られている(写真左)。幕出しの長持ち唄は、祭り3日目(14日)に実演がある。
■ 放生会の御神輿行列は隔年に実施されている。今年は御神輿行列の実施年だった。9月12日がお下り、頓宮で泊られて14日がお上りの日。前回、風水害により御神輿行列は中止になっており、今年は4年振りの御神幸。
9月12日、錦旗、清道、絹傘などに守られて、神輿はゆるりゆるりと馬出、千代、吉塚、箱崎に下がられ頓宮へ。上りは、逆コースになり頓宮から箱崎、本宮へと向かわれ午後9前に宮入り。
上りは御神幸の距離も短くなるが、一の鳥居近くから楼門前まで、百数十メートルを神具、神輿とともに全力疾走(写真上)。御神幸年の呼び物になっているがその淵源は明らかではない。参道を埋める黒山の観衆が見守る中、この奇習ともいうべき迫力満点の駆け込みが行われる。
筥崎宮の放生会は、ちょうど季節の変わり目に行われる祭り。境内になんとなく哀愁を感じさせる初秋の浜風が吹き、博多の夜が深けてゆく。-平成17年9月- |
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