丹後半島の中央部に野中(旧野間村)というところがある。日本海に注ぐ宇川の上流域にあって四方は山。仙境を彷彿とさせる。
稲刈りの済んだ川沿いの田畑周りは柴刈りや清掃が行き届き、美しい自然の中に村はある。近年、高原をなす半島の脊梁部に牧場やスイス村(丹後半島森林公園)ができ、訪れる人も多くなった。
10月7日、晴れ。今日は大宮神社の秋季例祭、獅子神楽、ビンザサラが奉納された。
祭りは午後2時から斎行され、まず神楽奉納(写真左)。獅子と天狗の掛け合いの構成になっていて、天狗はササラを擦りながら獅子を挑発し、暴れる獅子が観客の頭を噛む場面もある(健全育成、大願成就)。15分ほどの奉納だった。
次にビンザサラの奉納。本殿から2基の神輿が担がれ、本殿から50bほど離れた宇川の河岸に渡御し、神輿は土壇(御旅所)の砂盛りの上に鎮座。ビンザサラ踊は土壇の前に筵をひき奉納された。
ビンザサラ踊は、@ビンザサラ方5人。うち1人は手拭いでササラの振りをする新入りの踊り子。踊り子は縞の着物に紅の襷、長く垂れた鉢巻、白足袋。A太鼓方4人。黒の着物に裃、白足袋。B笛方1人。紋付の着物に袴、白足袋の10人。踊り手は田楽傘を被らない。
この日、奉納された曲はトビビラキ、ハグクミ(手で口をふさいで踊る)、オリワゲ(ササラオドリともいう)、テオドリ(ササラを使わない)の4曲(写真下)。都合30分ほどの踊。装束は藩政期のそれであるが浮流の影響が少なく、田遊びから芸能への脱皮期に生じた田楽の基本を映しているように思う。完成度等において田楽の白眉であろう。シャギリは宮入りや御旅所へ渡御の際、ササラ方が太鼓を抱え、太鼓方が長さ20aほどの細く小さなバチで曲を演じる行道芸で見かけたことのない稀有なものである。ビンザサラの起源は大宮神社のそれと同様、正慶元(1332)年と伝えている。−平成30年10月7日−
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