京都市街の北、四季折々の自然が美しい北桑山地。深い森と渓谷。うっすらと色づきはじめた紅葉が美しい。道々に幟が立ち、この地方の秋の深まりを告げている。
矢代中町の峡谷沿いの参道を行くと日吉神社が鎮座する。10月14日、今日は日吉神社の秋祭り。社周りに神紋を染めた幕がひかれ、舞殿に裸電球がひとつ。これから田楽が奉納される。
午前11時、式典が済むと、裃姿の笛方に先導され、素襖をまとった舞方一行が第一鳥居先から出発。笛方、舞方ともに、ササラの先に「松竹」(4枚)と書いた紙を貼り付けた花笠を被る。10年ほど前に編みましたと氏子の方。一行は50bほどの参道を行き(写真上)、第二鳥居で祓いを受けて舞殿に上り、田楽ははじまる。舞方8人中4人は黒の素襖を着て、ササラを擦りながら踊る。白の素襖を着た4人は、太鼓を打ちながら踊る。笛方は1人。
踊りは2曲。1曲は輪踊り。前屈の姿勢から片足を高く上げ、千鳥がけに足を踏み下ろす。よろよろとした姿は老人を完成霊魂として崇め、神格化したものであろう。もうひとつはササラ方と太鼓方が2列になって向き合い或いは反転しながら千鳥がけに踊るもの。これらの2曲を3度繰り返して1回に数え7回、都合21度踊る。近江の日吉神社から21番目に勧請されたので21度踊るよしである。なんとも過酷な踊りである。
矢代田楽は、輪踊や2列になって踊る形式が失われておらず田楽の様式を整えている。千鳥がけの所作などは田楽が能に近づいていく過程で農民によって伝習されたものであろう。−平成30年10月14日− |