大阪
坐摩神社の陶器人形(夏祭)−中央区久太郎町−
 大阪のメインストリート・御堂筋の西側、久太郎町4丁目に坐摩(サカスリ)神社の社地がある(写真左)。今では、ざま神社と呼ばれることが多くなった。
 神社はもともと淀川の河口部に鎮座し、延喜式で摂津国西成郡の大社に列せられた古社。天正年間に大阪城の整備に伴い船場(今の久太郎町4丁目)に遷座した社歴があり、天満橋の八軒屋近くの石町の旧社地に鎮守(行宮)がある。古代の難波津に祀られた神社であった。
 久太郎町の坐摩神社の境内地に陶器神社という末社がある。例年7月、夏祭りのころ、境内に「せともの市」がたつ(写真上)。昔はこちらの方の名が売れ、本社がかすんでしまった感があった。坐摩神社は交通盛んな都心にあり、渡御は明治の初年から行われていない。
 横堀川の西岸から阿波座、靭(うつぼ)にかけ一帯に陶器店が立ち並んでいて、せともの祭りのころ棚卸しをするのが常で、いわゆるセールを行った。商家や町屋の者はこの催しを機会に店員や家族の皿や茶碗などを買い込み、新聞紙に包み藁で縛ってもらって手に提げて帰る光景が夏祭の風物詩でもあった。戦後の復興期であった昭和30年ころが一番、活気があった。瀬戸物町の町筋や境内地に随所に、沢山の陶器の飾り物がでて賑わった。飾り物は、菊人形の要領と同じで芝居などの一場面を再現するジオラマ。異なるのは菊がせとものに替わって衣裳や持ち物が造られるくらい。祭の日は飾り物の前は見物客で立錐の余地もなくなり、押しつぶされそうになった子供などは人ごみから抜け出すのに一苦労したという。氏地の商家は大戸を下ろし定紋の入った幕を張り廻らせ、玄関に御神灯を点けた。奉公人たちが帰郷した商家の並ぶ氏地はシーンとなり、芝居を見るような雰囲気があった。
 いまは、そうした古い難波の祭の風情を感じることも少なく
陶製燈籠
(陶器神社)
陶製狛犬
(坐摩神社)
なったが、祭りの期間中(平成19年は7月21日〜23日の3日間)、ささやかながら陶器神社の前に小屋が建ち、飾り物が展示され、瀬戸物まつりが開かれるのでるので、見物するものと良いだろう。
 陶器神社拝殿の左右に陶器の燈籠が1対、奉献されている。有田の陶山神社の陶製燈籠に似て、大人の背丈ほどもあるおおきな燈籠。本宮坐摩神社の狛犬も陶器製である。金比羅神社などに奉献例があるが、珍しいものである。
 大阪は須恵器の一大生産地だった。泉州一帯の丘陵地から夥しい古窯址群が発掘されている。ロクロと窯を使った焼成技術が朝鮮半島からで伝来し、赤くもろい土師器にかわって東北から九州にまで須恵器は全国に移出された。
 日本書紀は雄略天皇の7(463)年、百済から多くの工人が渡来し、そのなかに新漢陶部高貴(いまきのあやのすえつくりべ)という人が交じっていたことを伝えている。須恵器生産の初伝と推され、泉州古窯址群の発掘、発見はそうした渡来人の上陸を裏付ける記録であろう。工人集団はやがて飛鳥や近畿各地に分枝し、須恵器の生産を行うようになる。千度以上の高温で焼成された須恵器は、釉薬はかかっていないものの硬く端正な美しさを備えた陶器だった。千利休が愛用した「破笠」は須恵器の香炉としてよく知られている。時代の推移とともに須恵器窯はほとんど廃れてしまったが、焼成技術は泉州焼の轟窯などで伝承されている。せともの祭で窯元の出店がある。大阪は陶器生産でも歴史に名をとどめている。夏祭りの折にご覧になるとよいだろう。
陶器神社 飾り物
舞楽 万歳楽

サギ草
ジャズコンサート
 盛夏の日、境内に関西陶芸作家のささやかな瀬戸物市が立ち、傍らの神社会館では瀬戸物まつりが開催中。拝殿脇では鉢植えのサギ草が羽ばたいている。坐摩神社の神紋はサギ。社伝は神功皇后が松枝にサギが群がる田蓑島(現在の天満橋付近)に坐摩神を奉斉された縁からサギを神紋と定めたよし。その縁から、サギ草が咲き始めるせともの祭のころ、例年、丹精を込め育てられたサギ草(写真)が展示される。夕刻(7月21日)からはマグノリア・ナチュラルフレーバーズ(1996年結成)のジャズコンサーコ(写真)が開かれた。平成19年7月

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