九州絶佳選
佐賀
市川の天衝舞浮立−富士町市川−
有明海と玄界灘。南北の海域に水を分ける天山。その山懐から流れ出るいく筋もの谷川が渡瀬川となり、市川川、嘉瀬川と次第に水量を増しやがて有明海に注ぐ。この嘉瀬川の流域にも随分多くの地区で浮立が伝承されている
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 10月15日、天山の頂からどんよりとした雲が去り、やがて晴れ間がのぞき始めた午後1時過ぎ、渡瀬川の上流の集落から笛が鳴りはじめ太鼓の音が聞こえる。スブソ(祭りの座元、頭屋に似る)の門から浮立の道行が始まり、旗を先頭に高張提灯、馬簾、傘鉾が続く。その後ろに棒使い、横笛、大太鼓、パンパコ、モリャーシ打ち、銭太鼓などが続く。パンパコは祭りの当番集落内の未婚の女性が務め、黒の留袖で花嫁のいでたち。頭上に御幣を立て色紙の垂れがあり、顔を隠すようにして進む。パンパコは行列の華。可愛らしく奥ゆかしさが感じられる。
 道行浮立を演じながら行列は諏訪神社に到着。行列は、鳥居の前で谷川の水を馴染ませた長い竹竿の先に付いた祓幣で清められ神前へ。棒使い、にわかなどが終わると、本番の天衝舞が始まる。舞人は天衝(月)と呼ぶ冠を被り、神前で神を拝んだり、舞をしたり、太鼓を打ったりと主役を演じるのである。腰にはゴザを垂れ、左腰に御幣を差す。昔は短刀を差し、失敗すればゴザに座り腹を切るとの趣旨であったようだ。顔を覆う白布は短刀を握るためのものという。
 諏訪神社への浮立奉納が終わると、西福寺奉納浮流などがあり、西福寺からまた道行の浮立をやりながらスブソに帰り打ち止め。近年、市川に「浮立の里展示館」ができ、周年市川の天衝舞浮立の資料見学が可能になった。浮立のジオラマや県下の浮立のパネル展示、紹介などがある。
 同日、富士町の須田地区においても浮立が奉納(写真右)された。須田地区の浮立は鉦浮立。集落の高所に祭られている権現神社の鳥居前で打ち出しが行われ、順次各集落の神社に浮立の奉納が行われた。-平成17年10月-
スブソでのひととき(ボタンクリック)
パンパコ モリャーシ打ち 娘カネ打ち ヤッコ

市川浮立
須田浮立