九州絶佳選
福岡
博多どんたく-福岡市-
 ‘ぼんち可愛やねんねしな’の歌いだしではじまる「博多どんたく」。この歌はもともと江戸の唄だった。4節まであり、4節目は「博多どんたく 福祭り 恵比寿に大黒 福禄寿 千代に繁盛の町じゃもの めでたく祝うてすっぽんぽんぽん」と唄うが、これは江戸唄に博多風のアレンジを付加した歌詞であろう。
 行列は 「松ばやし」を先頭に杓子をたたいて街を練り歩く。もともと正月15日に武士の間で行われた行事が町人の間に広まったもの。日露戦争後は4月30日〜5月1日にかけ行われたが、昭和24年からは憲法記念日の5月3日から3日間、その後5月3日、4日の両日催されるようになった。2日のうち必ず1日は雨が降るという祭りのジンクスがあるが、今年は両日とも嘘のように晴れあがった。どんたくの語源は、オランダ語の休日を示すゾンターク(ZONDAG)である。
 どんたくの本家はパレードの先頭を行く七流の住区の住民で構成される三福神と稚児行列。三福神は、馬に乗った福禄寿に恵比須、大黒。恵比須は夫婦恵比寿。肩衣を着てたっつけ姿の数十人の人々が三福神を取り囲むようにして行進。その後に続くのは稚児流といわれる稚児の行列。傘鉾の後ろに桟敷台をつけ、要所要所で天冠を冠った少女が鉦、太鼓の囃子で謡を歌う。この三福神と稚児行列が松ばやしといわれるもの。明治初年のころなど一時期、休止された時期があったが、室町時代から連綿として続いている。松ばやしの後ろに、通りもんといわれる曳台や仮装した人々の行列が連なる。5月3日の日は、博多駅前から天神まで約2キロの道のりを行進する。どんたくの参加者は3万人を超え、午後1時から暗くなるまで延々とパレードは続く。沿道は黒山の人で埋め尽くされ、観客動員数は200万人を超えるという。日本で最も規模の大きな祭りであろう。
 博多どんたく、博多祇園山笠は、ともに博多の流(豊臣秀吉によって行われた博多の街割り)の人々によって今日まで守られてきた。博多どんたくも博多祇園山笠も年々、盛んになってきている。これもまた、自治と伝統を尊び、来る者を拒まないという博多っ子の粋で自由な気質によって支えられているのであろう。−平成17年5月3日−