由良川の名勝を河口部から遡ってみると由良の戸、安寿と厨子王の塩汲み浜伝承地、山椒大夫屋敷跡、桑飼下縄文遺跡、元伊勢皇太神社、福知山城跡、私市円山古墳、大本教綾部本部弥勒殿、山家城跡、和知人形浄瑠璃、大野ダム、美山の茅葺集落等々の上古から現代に至るまで連綿として築かれた数々の由良川文化の跡を辿ることができる。 由良川は、また深い峡谷にV字谷を刻む。段丘上の険しい斜面で農林業が営まれてきた歴史は、四国・吉野川の流域村落と相似通ったところがある。 和知から山家に至る渓谷上に、その典型的な村落が点在し、丹波の天空に映えて美しい。
山家の由良川渓谷に立岩という名勝(写真左)がある。昔は文人墨客が杖を曳き、シーズンになると釣り客で賑わったところだ。皇室へ献上され、かの井伏鱒二が釣り糸をたれた山家のアユこそこの立岩のアユであったに違いない。 しかし深い峡谷の斜面はいつの間には木竹が茂り、次第に人々の入川を拒むようになったようだ。国道27号線脇の空き地が、立岩の唯一の展望所だった。近年、立岩(由良川左岸)への散策路が拓かれ、JR山家駅から徒歩30分ほどで立岩見物が可能になった。 4月某日、立山を訪れる。高さ30メートル周囲50メートルの立山は実に怏々しいものだ。立岩から由良川にせり出し、甌穴が刻まれたた巨岩(写真左・下)もまた美しい。立岩の東側一体はヤブツバキの純林が広がリ、満開。由良川流域では珍しい植生をなしている。立岩の西側の岩陰でひっそりと咲くミヤマカタバミが実に可愛らしい。大事にしたい由良川の名勝である。 夏季には立岩下流で観光やな漁が行なわれる。丹波の仙境に遊ぶ日があっても良いだろう。-平成26年4月- |