京都
木津川流れ橋−八幡市上津屋−
 伊賀上野市の山中を発った水流が山城の笠置、木津を経てようやく八幡市あたりで宇治川と桂川に合流し、淀川となって大阪湾に達する。その合流点にほど近い八幡市上津屋に木橋が架かる。全長356メートル余、日本最大級の木橋という。橋の羽目板(通行部)の両側に延々とワイヤーロープが結わえられている。橋はちょうど橋げたに羽目板が載せてある按配である。集中豪雨によって川が氾濫すると、羽目板が浮き流れる仕掛けである。洪水によって流出した羽目板をロープで手繰り寄せ、再び橋脚にそれを載せると復旧完了である。なんとも合理的な流れ橋は、実は日本が高度成長期に入る昭和40年代まで各地に存在した。今日、京阪神のはざまで、押し寄せる開発の激流に抗しながら、流されても流されても流れ橋は立ち続ける。平成4年から4年間、毎年流され続けた橋は、架設以来16回も流出し、そのたびに復活している。なんともよい風景である。
 流れ橋から木津川沿いに数キロ、京阪八幡駅近くまでサイクリングロードが通じている。土手沿いの道を行くと、叢で虫が鳴き野草が初秋の風に揺れている。−平成20年9月−