芸北の古民家−山県郡北広島町東八幡原−
芸北 自然の館 外観
芸北 自然の館 内部
 広島県最北部の町、中国山地の脊梁部に芸北町という町がある。この地方の民家にかつて茅葺の「中門造り」という建築様式がいきていた。いま、実際に居住されている中門造りの民家はなく、わずかに「芸北 自然の館」(写真上下)に復元されたものと「町立芸北民俗博物館」に活用されている旧民家1棟が残るのみである。写真の正面右手に突き出た部分を中門という。左右に張出すと両中門といった。平面図にすると前者はL字形、後者はコの字形になる。本州では、山口県に両方の様式の民家が30年ほど前まで僅かだが残っていた。広島でも両中門造りの民家が存在していたかもしれないが今は消滅。
 両様式の民家は、九州ではごく普通に存在していたものと思われ、佐賀あたりでは今も実用に供されており、中門造りを鈎造り、両中門造りをクド造りといっている。(参考欄参照)
 これらの住宅は、大隈の二階堂家住宅や知覧の二ツ家などに源流を見出すことができ、南方から南九州を経て日本に伝播した建築様式ではないだろうか。部屋の間取りや用途など比較すべきところはあるが源流は南方であろう。
 山陽新幹線で広島に入ると、車窓からオモヤとハナレを中門風の廊下で結合した赤瓦の立派な民家がみえる。 オモヤは中二階であることが多いが、居蔵造りといっている。中門造りと似ているが、その起源は脱穀機の導入に伴って、オモヤのダイドコロなどヘ籾殻が飛散しないよう作業場として発生したものともいわれる。中門造りとは起源を異にするように思う。−平成18年5月−
 参考: 九州: 草屋根紀行 漏斗造りの民家 白石の田園風景 大興禅寺 千年家
      広島: 熊野点景 加茂の茅葺民家 芸北の古民家 堀江家住宅 荒木家住宅
     京都: 茅葺の風景 丹波路の風景