ユリノキの花期が過ぎホオノキの葉が青さを増した。タイサンボクの大きな花が咲き夏らしくなるころ、植物園の睡蓮も水草も或いは用水端のメダカさえ入梅を待ち焦がれているようにみえる。広大な園地に自然の植生にしたがって草木が茂る。この公園は都会地では特に貴重である。
6月初旬、今年もまた、園地の谷筋でササユリが清楚な花をつけている。ササユリの開花は宇治田原の山間や宇陀高原、信楽高原では平年6月15日前後であるが、交野の杜(大阪市立大学理学部附属植物園)ではそれより10日ほど早く、平年6月5日前後に開花する。植物園のササユリは年々、わずかながら繁殖域が広がり、谷筋のかなり上部にまで花が這い上がっている。淡紅色から次第に白さを増した花は、ひんやりとした谷に相応しく、またサユリの別称があるように清楚で美しい。初夏の宝石であろう。
ササユリの咲く谷の上部では、もうコアジサイ、ヤマアジサイが咲いている。鬱蒼とした樹林とひんやリとした空気が季節の移ろいを加速しているようにも思われる。−平成22年6月− |