思い草(ナンバンギセル)−交野市私市(大阪市立大学理学部附属植物園)− |
道の辺の 尾花が下の 思ひ草 今更々に 何か思はむ
<万葉集> |
ナンバンギセルはススキの根に寄生する植物である。花の形状がマドロスパイプ(ナンバンキセル)に似ていてそのように命名されている。花にはラオ、ガン首、火皿のようなものが揃っていて、むしろ日本のキセルに近いように思うのであるが、なぜかナンバンギセルと呼ばれるようになった。・・・尾花が下の思ひ草・・・万葉人はナンバンキセルを「思い草」と呼んだ。
うつむきかげんに咲く花は、決して美しい花ではないけれども、それは野辺に腰を落とすと、目線の先にみえる花。ほの暗いススキの叢で咲き、白い花房の先端部は薄紫色。乙女の恋心は一層、一途なものとなっていく。目立たないがゆえに、「思い草」なのだ。千年余を経ても思い草はやっぱりススキの根元で咲いている。−平成20年9月− |
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