京都
三段池公園の松林のこと-福知山市猪崎-
 JR福知山駅の北東1キロほどのところに三段池公園がある。その名称は公園に含まれる三段池という灌漑用ため池(約5へクタール)に由来する。公園は烏が岳のすそ野を占め、眼下に由良川が環流し、音無瀬橋のそばに福知山城がみえる。
 公園は池の周りに体育館、武道館、テニスコート、児童科学館、動物園、植物園(下段)などを配し、漸次整備された都市公園。文句なく北近畿をリードする中身の詰まった公園であろう。
 三段池公園の植物園や緑化相談所は、都市緑化推進の趣旨からが開設され、池周りに自生の松林ゾーンが配されている。
 京都府下のほとんどの地域からまとまった松林が消えた今日、この公園には総数1000本を超える松が自生する。目通し3メ
植物園
ートルを超える大木が池の縁を飾り、松の香りが漂う林間に松籟を聞き、緑陰に遊ぶ市民の姿が見え隠れする。
  天橋立くにの松原虹ノ松原津田の松林気比の松原 など松の名勝の多くはクロマツ。三段池のそれはアカマツ。薦着せや農薬の空中散布を行わず一本一本が適切に管理され、虫害で枯死する松はほとんどないという。
 丹波はかつて松の良材で知られたところだった。舞鶴港は松材を求めて集まる材木商で賑わった。私たちが遠い昔に見た丹波の松林が姿を変えず公園に残っている。
 戦後、食糧増産の掛け声のもと松の美林の多くは伐採され、開拓に供され或いは杉や桧に植え替えられ樹種転換が進んだ。しかし昭和30年代の後半、外材の輸入が自由化されると森は伐期齢を過ぎた針葉樹で溢れ、暗黒の森と化してしまった。

 三段池公園は樹下に遊歩道が設けられ、ベンチなどの休憩施設も整っている。池を右手に見ながら樹林を抜けると、「みわちゃんとウリ坊」の友情物語で知られた動物園がある。人気を博して以来、十数年を経たがかつての人気者は今なお健在。ひっそりと暮らし、時おりねぐらから顔をのぞかせ今も人気者。
 別のケージではコウノトリが展示されている。地元(綾部市)で傷つき、救護施設に指定された当動物園で治療中とのこと。大きな体躯は美しく、感動的である。園を出て猿山に回ると子ザルを懸命に育てる親猿がいる。その仕草など見ていると、私たちが忘れつつある何かを教わっているような不思議な気分になる。良い志向の動物園が丹波にある。 -令和5年8月-