藤原宮之役民作歌
やすみしし わご大王 高照らす 日の皇子 荒たへの 藤
原がうへに 食す国を 見し給わむと 都宮は 高知らさむ
と 神ながら 思ほすなべに 天地も 寄りてあれこそ 石
走る 淡海の国の 衣手の 田上山の 真木さく 檜の嬬手
を もののふの 八十氏河に 玉藻なす 浮かべ流せれ
其を取ると さわく御民も 家忘れ 身もたな知らず 鴨じも
の 水に浮きて わが作る 日の御門に 知らぬ国 寄し巨
勢道より わが国は 常世にならむ 図負へる 神しき亀も
新世と 泉の河に 持ち越せる 真木の嬬手を 百足らず
筏に作り 沂すらむ 勤はく見れば 神ながらならし
〈万葉集〉
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