京都
丹波・村々の夏祭り−綾部市−
  奥丹波の村々は8月13日、14日の両日、夏祭り(納涼祭)を行なうところが多い。それは8月盆の期間中に、地蔵盆やちょうちん祭(大日堂や祠周りにちょうちんを巡らせて先祖供養を行う)と称する子供の祭と兼ね行うところが多い。
 物部・白道路の納涼祭は小道に竹灯明を巡らせ、また大畠のそれ(瑠璃寺の地蔵盆。納涼祭を兼ねる)は模擬店が出るなど子供が中心の祭になるように地区、地区で嗜好が凝らされる。
 綾部市の北西部に三土市(第3土曜日に市がたつ)で賑わう志賀郷と言う町がある。盆地をなし、春夏秋冬、田園風景が美しい。町は「志賀郷七不思議」伝説できこえる歴史のある町。七不思議のひとつ「みょうがさん」はこの町の阿須須伎神社で行われる伝統行事。納涼祭の規模も破格である。
 納涼祭は鳴り物入りの福知山音頭で賑わい、夜店も出る。花火は質量ともに実に立派なものだ。花火の企画、デザインともに申し分がない。この日は盆休みの帰郷者や花火の見物人で町の人口は平日の何倍にも膨れ上がる。
 旧郡部の納涼祭(花火大会)は志賀郷のほか中筋のそれがよく知られている。7月中に行われる納涼祭である。「あやべ水無月まつ」や福知山、宮津、舞鶴などの夏祭のように河川や海浜を背にした花火もよいが、古色をとどめる村の端にはじける花火もまた風情があってよいものである。
 丹波の以久田野やその周辺の山間は盆が終わると朝夕、めっきり涼しくなる。野辺にテッポウユリが咲き、夕霧が立ちはじめるのもこのころだ。−平成22年8月−

八田の夕霧

以久田野というところ
 丹波の以久田野(綾部市。合併前は何鹿いかるが郡以久田村)は、由良川を挟んでその左岸に立地する長田野(福知山市)と対峙する高原である。
 その以久田野の中央に府立畜産センター(写真下)や農業大学校が立地し、以久田野は京都府下における農業振興や後継者育成のメッカともいうべきところである。
畜産センター 畜産センターは戦後、一貫して京都和牛の生産や乳牛の優良種の普及、改良に主導的役割を果たし続けている。交通手段の乏しかったころ、センターで採取された繁殖牛の精液は伝書バトの脚環に結わえられ府下の拠点施設に搬送された。伝書バトは自力でセンターと繁殖拠点施設間を往復していたわけで、軍用バトに似た訓練が施され、伝書バトの平和利用の好例だった。
 由良川の支流・八田川や犀川などの段丘上の高原では、茶、栗などの栽培が盛んである。丹波は、古くは綿花や桑の栽培で聞こえ、蚕糸試験場も綾部市に所在し、蚕の研究が盛んだった。
 綾部市は郡是や神栄などの製糸会社の発祥地。全国各地から女工が集まり、特異な人口ピラミッドを形成し、町の小間物屋が繁盛し、商工業都市・福知山市と丹波の雄を競ったのも昔語り。今では地の利を得て、勢いのある福知山市が北近畿のハブ。
 綾部市は島萬神社(西八田)、大川(佐陀)神社(栗上)、須波伎部神社(物部)、阿須須伎神社(志賀郷)など延喜式内社が多く、歴史のある土地である。京都に比較的近く、王朝時代には上国として扱われ、中世には皇族貴族の所領が虫食い状に所在した。由良川本流や支流の犀川、八田川流域には古墳が実に多い。遺物包蔵地も広範囲に分布する。聖塚は府下ではよく知られた古墳。近年、私市円山古墳が発掘され、由良川中流域における古墳文化が注目されるようになった。−平成22年8月−