長崎市電(長崎電気軌道株会社)が走り始めて約90年になる。現在、4系統で営業距離は約11キロメートル、停留所数は39ある。こじんまりとした市電は、長崎市民のゆったりとした性格にもよくあっている。高度成長期に全国に吹き荒れた路面電車廃止の動きが長崎ではまったくなかった。
もちろん長崎市電の経営努力が市民に支持されていた所以であるが、長崎の市街にはやはり路面電車がよく似合う。市内の観光地は、ほとんど電車で廻ることができる便利の良さ。県外者にもすこぶる評判がいい。三方を山に囲まれ、広くない市域に無秩序に自動車が流入すると、市内の空気はよどみ慢性的な交通渋滞を引き起こす。その解消のためバイパスをつくれば長崎は要塞のような都市になることは目に見えている。市電は、市民と観光客が同乗して良い雰囲気である。
水を得た魚のように、今日もまた長崎の街を路面電車が気持ちよく走っている。−平成17年5月− |