俵牛、たいこ持、おこそ頭巾、三番そう、犬、おすもう、福助・・・十数種もの土人形がショーウインドーに並ぶ。これらの人形は出雲人形と呼ばれ、特に戦前は大和の代表的な玩具だった。長谷寺参詣の土産物として売られていたものだ。戦後、玩具にも嗜好の移り変わりもあってこうした素朴な味わいのある玩具が消えた。出雲人形もその例にもれず、戦後廃絶になった郷土玩具のひとつである。しかし、近年、窯元の執念によって出雲人形は見事に復活した。人形の「土型」が保存されていて、復活につながったようである。おこそ頭巾(写真左)などは、顔の向きや表情がみな異なり、同じものはない。たいこ持(写真右)は朝鮮通信使の風俗をうつしたものという。玩具は、時代時代の人々の興味が注がれた風俗或いは縁起物の嗜好などをうつし、子供たちの慈悲、愛育の心をも養ったことであろう。
玩具を出雲人形といういわれは、出雲の工人が当地に移り住み土偶の製作に当たったことに由来するという。時代を経て玩具の製作にあたるようになったのであろう。 こもりくの初瀬の巷に、こうした玩具が復活したことは心温まるものがある。−平成20年5月− |