厳島神社の管絃祭−廿日市市宮島−
 旧暦の6月17日、午後11時、浮殿の彼方に浮ぶ澄んだ月明かりに朱の大鳥居が浮ぶ。漕船に曳かれた三艘つなぎの和船は御座船。船首に宝剣、宝鉾、船尾に神鏡をうち立てて、三管、三絃、三鼓の管絃をかなでつつ御座船は、ゆるり、ゆるりと大鳥居を潜り、浮殿に入ってゆく。
 管絃祭は、旧暦の6月17日の夕刻、宮島の本社大宮から御神体を乗せた御座船が約4`離れた対岸の地御前神社に渡御し、宮島の長浜神社、大元神社を回り本社に帰還する厳島神社最大の祭りである。平清盛の創案と伝えられ、安芸の海に管弦の調べをうつし、この日のため各地から集まった船によって奉祝される。漕船、御座船は、倉橋島や呉の阿賀、広島の江波など古来、管絃祭にかかわってきた漁家によって造られ、操船される。
 平清盛は、安芸守を10年務め、瀬戸内海の制海権を掌握し、やがて公卿に列するようになり、仁安2年(1167年)に太政大臣に任ぜられた人。安芸を離れて11年目、武家最初の栄進だった。太政大臣に就任後も清盛は、しばしば厳島神社に参籠し、平家一門の命運を厳島に託した人だった。倉橋、阿賀、江波の人々もまた、古来から平家とともに内海に雄飛した海人の末裔であろう。−平成18年7月12日−
 

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