奈良
都祁高原−天理市福住町、奈良市此瀬町−
 奈良盆地の東部に、準平原をなす高原が広がる。高原の起伏に富む丘陵に拓けた茶畑や谷あいの集落がおりなす佇まいは、大倭の官人ならずとも魅力のあるところ。太朝臣安萬侶、小治田朝臣安萬侶など奈良朝の官人は当地を終の棲家とし、高冷の気候は氷室の適地。奈良の蒸し暑い夏に日に、氷室の氷が長屋王の喉を潤したことであろう。王の邸宅地跡から出土した木簡の書付から都祁氷室の存在が立証された。近年、都祁の故地に氷室が復元されている。
 高原はまた、木津川、大和川の水源地帯である。都祁水分神社が鎮まっている。その起源は8世紀にまで遡るという。大和棟の美しい民家や茅葺の寺(西念寺)などが散在する。この高原は去る時を得ない。−平成20年4月−

都祁水分神社 大和棟の民家
(都祁)