京都
ニリンソウ−相楽郡和束町−
 京都府の南部に和束町という人口5000人足らずの町がある。山頂あたりまで植栽された茶畑の好風に見とれながら、木津川の支流和束川沿いに往く。北辺に迫る高地は、滋賀県の信楽との町界をなし、宇治川と和束川との分水嶺。古人はこの山塊を越えて恭仁京から紫香楽宮へと旅立ったのだ。
 和束川の源流部辺りの集落まで往くと、ひんやりとした空気が峡谷に漂い、谷筋の斜面にシャガの花がわずかにほころびはじめ、峡谷に春の彩を添えている。谷筋に沿った細道の斜面に咲く花はニリンソウ。イチリンソウの半分ほどのつぶらな花。総包葉の間から1〜3本の花柄をだし長径2センチほどの花をつけている。ガク片は5。花弁はないがガクが花弁状をなしている。大体、花柄が2本立ちしているものが多く、ニリンソウと命名されたもの。二輪の花は一緒に散らず、一輪づつ散っていく。寂しさを伴う花であるが、清楚で小さく、懸命に咲く花ゆえ、イチリンソウとはまた異なる情趣がある。イチリンソウは茎は直立し分枝せず、花柄の基部に包葉ガ3輪生する。葉ヤマルリソウの切れ込みガ深く、葉は尖ってみえる。ニリンソウ同様、花弁はない。
 ニリンソウの脇でブルー色の華やかな花はヤマルリソウであろう。和束川は四季折々、良い自然を包んで流れる川である。−平成22年4月−
  参考 : ニリンソウ