備後のカヤグロ−神石郡神石高原町−
 茅の刈干の風景を目にすることも少なくなった。安芸の山地ではほとんど目にすることはない。九州、四国のどこでも状況は同じと思われる。
 茅の需要が旺盛であった昭和40年代のころまでは、福塩線の車窓にうつろう刈干の風景が旅情をさそったものだった。
 茅葺住宅の更新等を機会にして次第に茅への関心が薄れると、茅場は荒廃し、植生が遷移し、山野に茅すら見かけなくなって久しい。しかし、茅を肥料とする伝統農法が生きている一部の山間地において、刈り取った茅を畑の土壌改良に用い、残ったものを束ねて野に立てる風景が残っている。
 庄原や神石高原町の山間に、そのような農法を守り、茅の刈り干しが立つ風景が生きている。土地の者は、刈り取り束ねて立てた茅をカヤグロと呼んでいる。呼称は、徳島県の剣山山麓の村々と同じ呼称である。瀬戸内海を挟む山間地で、奇しくもカヤグロが生きていたのである。−平成18年6月−

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