九州絶佳選
宮崎
刈干の風景-高千穂町-
♫ ここの山の刈干しゃすんだよ-  明日はたんぼで稲刈ろかよ-
刈り干し風景 高千穂をゆき、国見の丘辺りの急な傾斜地の所々に、刈り取った萱を束ねた刈干しの風景がわずかに残っている。
 萱は冬季の牛馬の飼料或いは屋根の葺き替えの材料として広く使用され、萱刈りの風景は全国どこの農村でもよくみられた秋の風物詩だった。
 高千穂地方では萱刈りの労働歌として刈干切唄がうたい継がれてきた。しかし、いまでは萱の需要がなくなり、萱場は消滅してしまった。
 高千穂においても、牛馬の飼料は配合飼料、民家も萱葺家屋を見かけることもほとんどなくなった。当然、屋根葺き職人もいない。
 高千穂の国見が丘の頂上付近に刈干しの風景がわずかに保存されている。赤松のたもとに刈干しのある風景は郷愁をそそるものがある。 
 刈干しが日常生活に溶け込み、年中行事として萱刈が行われるところは、四国山地の剣山周辺の山村くらいではなかろうか。剣山辺りでは、刈り取った萱はカヤグロと呼ばれているが、作り方は高千穂と似たようなものである。-平成18年1月-