若狭ノート
ああ常神−福井県三方上中郡若狭町常神
 三方五湖の北西に日本海に突き出た半島がある。
 半島の西岸沿いに神子、小川、遊子の浦々を往くと半島の最北端の街、常神(写真)に往きつく。
 常神は40戸足らずの漁村集落。漁業と民宿の街である。この街を有名にしたのはソテツの大樹だ。民宿の立ち並ぶ狭い路地を往くと、住宅地の裏庭にソテツはある。雌株で幹回り5.2メートル余、分枝した支幹は4.5〜6.5メートル。樹齢千年を超えると推されている。日本最大級のソテツがその北限とされる常神にある。
 ソテツは九州・沖縄で育つ暖地系植物。しかしその頂点木は小豆島にある。ソテツの大樹が九州・沖縄の各県以外に所在する不思議はどうもその生い立ちにあるように思われる。つまり、常緑でその樹形が特異なソテツは廻船などで四国や北陸にまで運ばれ、慈しまれ大切に育てられたがゆえに北へ北へとその分布を拡大していったのではないだろうか。
 常神は対馬暖流の賜物。暖流が常神を育てソテツを育てたのだ。丹後の経ヶ岬、若狭の常神、敦賀、越前岬…海上の海運ルートがソテツを運び、育てたのではないだろうか。
 冬の日、常神の海は凪、波止でのんびりと釣りする人がいる。浜干しのダイコンが旅人に冬支度の時を教えている。−平成25年12月−

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