宇和津神社(一宮)の秋祭り−宇和島市野川新−
牛鬼
獅子舞
獅子舞(拡大600pX
 和霊神社の夏祭りと宇和津神社(一宮)の秋祭りは、宇和島の最大の年中行事。
 宇和津神社の秋祭りは10月29日(本祭。平成23年)。神社周りに露店が軒を連ね賑わう。
 午前9時ころ牛鬼、八ツ鹿、獅子舞、サルタヒコ(猿田彦)などが宮入りし、神事の後、市中を練り歩く。牛鬼は全身5メートル余のドンガラ(胴)を赤い布などで覆い、カシラ(頭)に角を立て、オバチ(尻尾)に剣の形をした白幣を垂らす。小さな牛鬼も巡行。八ツ鹿は8人の少年が鹿の頭を被り、胸に太鼓を括り前垂れで覆う。7ツの牡鹿と1ツの牝鹿が鹿舞歌を歌いながら踊る。モミジ、ススキ、ハギを染め抜いた前垂れと着物に美しい。獅子舞は獅子と太鼓を打つ少年が対になり舞う。唐獅子と呼ぶところもある。綿入りの太いむこう鉢巻に紅い襷が映える。
 サルタヒコは長い祓い棒の先に御幣を垂らし、巫女と太鼓車を伴って巡行。サルタヒコの姿は岩戸神楽の荒神とうりふたつである。八ツ鹿、サルタヒコなどは有志の氏子宅前などで舞を披露しながら市内を巡行する。−平成23年10月−

 八ツ鹿、巫女の舞雑感
八ツ鹿踊り(拡大600pX
 南予(南伊予)では鹿踊りがずいぶん盛んである。旧宇和島藩領を中心にして土佐などにまで及び、実施団体(地域、集落)数はゆうに100ヶ所を超えるものと思われる。鹿踊りの構成についても八ツ鹿を上限にして五〜七ツ鹿までそれぞれ分布する。必ず牝鹿一ツが交じり、牝鹿は頭上にススキ、ハギなど季節の草花を戴くのが一般的。しかし、当地のそれは牡鹿がサカキを戴くものの牝鹿は無冠。鹿舞歌に音頭取りはおらず、八ツ鹿それぞれが太鼓をたたきながら唄い、唱和する。少年の高い声が心地よく、リズムもよい。
まわれ水車 遅くまわりて関にとまるな
白鷺があとを思へばたちかねて 水も濁さぬ立てや白鷺
 宇和島の八ツ鹿は宇和島藩の宗藩である仙台藩から伝わったとする説が有力である。しかし東北に広く分布する鹿踊りの曲数は多いが、南予のそれは地域により節や歌詞が変化するものの1曲のみである。歌いだしの‘まわれ水車 遅くまわりて関にとまるな’の歌詞と、隠された牝鹿を牡鹿が探し求めるストーリーはみな共通する。
 鹿踊りは平安時代前後からおこった田楽や念仏踊りと一系のものと思うがどうだろうか。当地の鹿踊りももともと遠い昔から南予に存在し、御霊信仰や亡魂の払い出しの心意とが結びつき田楽や念仏踊りなどの影響をうけながら鹿踊りが発生し、伝承されてきたのではないと思う。長い鹿踊りの歴史が鹿踊りを芸能化し、鹿の姿態や歌詞が磨きあげられた。ゆったりとしたたおやかさがある。鹿踊歌のリズムも申し分がない。南予の生活のリズムともよく合っている。南予の鹿踊りこそ民舞の白眉であろう。
巫女の舞い(拡大600pX
 さてサルタヒコの供、巫女の舞もまたウラヤス舞とは全く異なり、南予の青空に映えて可愛らしく躍動的である。少年が奏でる太鼓とすり鉦の音に乗って、サカキを手にして群舞する。少女の清純さが天意のままに爆発して美しい。私はこのような古風にして現代的な巫女の舞に接したjことがない。
参考:遊子谷の七つ鹿踊り