高松から松山へ向かう予讃本線の車窓から、ひときわ高く円錐形をした姿のよい山がみえる。丸亀平野の東端に聳える飯野山(標高422メートル)である。
讃岐にはビュートの山が随分多い。代表的なビュートを讃岐七富士と呼ぶ。飯野山は讃岐七富士の代表格。讃岐富士と称される。讃岐の典型的で美しい山である。
飯野山の生い立ちについて、溶岩台地の残丘、つまり千数百万年の雨水の侵食によって硬質部分が残り、軟質部が洗い流され山を成したものと説明されている。そのような大小のビュートが散在し、平野に独特の景観を醸す讃岐は、何かしら霊厳に通ずる神の国を思わせるに十分である。坂出に旅した人麻呂は、’玉藻よし讃岐の国は国柄か見れど飽かぬ神柄かここだ貴き・・・’と詠っている。坂出はビュートの宝庫。人麻呂も異境を感じとったことであろう。
ともあれ、飯野山は、その頂上から丸亀市、坂出市、飯山町に仲良く三等分され、山腹では桃などの果樹が栽培される宝の山である |