三滝寺−広島市西区三滝−
三滝寺塔 三滝寺の磨崖の仏の緑陰にさす陽が長くなり、滝の飛沫が紅葉の赤をいっそう際立たせ、十六羅漢の膝元に積もる紅葉が深くなると、広島の人々は秋の深まりを実感する。
 三滝観音で知られた三滝寺は、太田川放水路に架かる三滝橋を渡って1キロほど山側に上ったところにある。紅葉の名所としても名がある。真言宗。 
 寺の入口に近い丘に多宝塔がある。創建は大永6(1526)年。もともと和歌山県の広八幡神社の境内に建っていたが、山津波によって破損し天保年間に再建された履歴がある。昭和26年に三滝寺に移築された。大変美しい姿であり、尾道の浄土寺厳島神社の多宝塔につぐ古建築である。
 多宝塔の塔内に安置されている木造阿弥陀如坐像は、仁平4(1154)年の造立。
 もともと大阪府河内長野市の寺にあったものという。平安時代の標準的仏像といわれ、座高85センチ、檜材の寄木造りで漆箔が施され、肉けいは大きく、河内・和泉地方の地方的特色がみられるという。−平成18年11月−