石垣の町(坂本)−大津市坂本− |
大津市の北部に坂本という町がある。日吉山王社が鎮座し、延暦寺の里坊が建ち並ぶところである。
京阪坂本駅の改札を出ると、日吉山王社に向かって緩い坂道が続く。この道を日吉馬場と呼ぶ。通りの左右に50カ寺ほどの里坊が建ち並ぶ。そこは山上の延暦寺で研学と修練を終えた老僧が住まいする寺域。山から流れ出る水を引き泉水をつくり、庭のある坊舎が多い。それらは穴太衆の手になる石垣が築かれ、山腹の傾斜地に平地を生み出し建てられる。大小の自然石を巧みに組み合わせ、強固な擁壁をなし、切石にないなつかしさをかもして美しい。通りに続く石垣と水路。せせらぎが聞こえるようである。
この町に滋賀院という門跡がある。滋賀院御殿と呼ばれる天台座主の御座所であった総里坊である。御殿周りの石垣は穴太積み。坂本の石垣美の極点をなして余りある。
穴太衆は延暦寺の三塔十六谷に散在する堂塔伽藍の石垣工事や石仏の制作などにも関わってきた石工集団である。伏見城、名古屋、彦根城或いは遠く佐賀の名護屋城や熊本城など城郭の石垣にとどまらず、瀬戸内のみかん畑の石垣などにも穴太積みが散見でき、穴太衆の足跡は全国に及ぶ。坂本の里坊めぐりもよいものだ。−平成19年− |
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