ケリ(野鳥のこと)−大阪府下等− |
カササギが北部九州の鳥であるならば「ケリ」は近畿の鳥といえるのではなかろうか。
普段はケリッケリッケリッとよくとおる声で鳴く。コチドリやシロチドリと同種であるが、長い脚は黄色く、カラスよりだいぶスマートで体長は30センチメートル余、日本でみられる最大のチドリである。
起耕が始まり田に水が入るころ、生駒山地の周辺で頻繁にみかける鳥。同山地に沿った大阪、奈良の両府県の水田で特によく目につき、干潟よろしく水田で餌を食むケリを見るとき、なぜかこの鳥の宿命を感じてしまう。半世紀前、ケリを近畿地方で見かけることは少なかった。しかし、次第にケリは大阪、奈良はもとより播州や京都・丹波においても目にすることができるようになった。分布域は和歌山、滋賀へと拡大の様相であり、アマサギのそれと似ているようにも思われる。たぶん戦後の減反政策がケリの棲息によい環境を与えたのではないか。水田そばの転作田(乾田)はケリの繁殖によい環境を提供した。特に生駒山地の山田はケリの繁殖によい条件をそなえている。しかし、近年、生駒山地にほど近い大阪外環状線周りの交通繁華な道路端の水田にもケリは食餌に飛来する(写真下)。繁殖地はその山裾の畑地であるのだろう。生駒山地は北部九州のカササギの生息地・背振山地の位置づけと似たところがある。カササギが朝鮮半島からもたらされ、そこを棲家としたように、ケリもまた国内のいずこから飛来して生駒山地を棲家としたばかりかその生息域を四方に拡大しつつあるところもカササギと似ている。枚方市内に橋の名に鵲(カササギ)の名を付したものがある。しかしこれは、古い昔に朝鮮半島からもたらされた鳥がそこで放たれ、或いは飼養された記憶から名づけられたものであるのだろう。ケリは枚方、交野、四条畷一帯で羽根に白雲を漂わせ孤高の鳴声を生駒の山塊に響かせ、山裾の楽園に遊んでいる。近畿の戦後を生きるケリに拍手をおくろう。−平成21年8月− |
|
|
|
|