干拓地のクリークは実に美しい水辺を創出している。カラスより少し小さなカササギの生息密度もずいぶん高いように思われる。カササギは高麗カラス或いはカチ鳥と呼ばれている。カチは朝鮮語のカラスである。魏志倭人伝に、倭国の風俗習慣や産物に触れ、「・・・牛、馬、虎、豹、鵲無し」としるされており、もともと日本には生息していなかった鳥。朝鮮の役のさい立花宗茂が持ち帰ったものともいわれる。
カササギは日本では北部九州にのみ生息する希少種であるが、大和町辺りではごくありふれた鳥。白黒の艶のあるツートンカラーの清楚な姿で、水辺を飛ぶ姿は実に感じがよいものだ。
山門郡柳川で生まれ育った北原白秋は、しばしばカササギを詠っている。
「・・・鵲のしろき下羽根、月の夜と移る空なり。・・・童みな鵲を追い、鵲と影をうしなふ。」<「鵲」より>
九州のカササギの生息地は、背振山地といわれる。しかし、福岡の筑紫野でも甘木でも太宰府でも柳川でも、佐賀市内でも畑地で或いは住宅街の空き地などでよく見かける鳥である。特に水辺を好むようであり、運河地帯や河川敷辺りの電線などにとまっている姿をよく見かける。繁殖地は山林と思いきや市街地の電柱などに巣をかけていることもある。餌場があれば近くに巣を作る合理的な習性はカラスに似ているのかもしれない。
私は九州以外の土地でカササギを見たことがない。九州でも鹿児島や宮崎、大分でも見たことがない。やっぱりこの鳥は、多少移動するにしても脊振山地のどこかに惹かれて着かず離れず生きてきた鳥なのだろう。−平成17年− |