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福岡 |
矢部川の狐林(中の島公園)−瀬高町長田− |
有明海に注ぐ矢部川の中流域に船小屋というところがある。温泉郷として名のあるところである。川はちょうどこの辺りで少し湾曲し、中洲がある。中洲は公園になっていて、クスの巨木が鬱蒼と茂っている。
森に市民が集い、散策をする者やベンチで森林浴をする者など思い思いに秋の日の休日を楽しんでいる。矢部川にかかる潜水橋に立つと、橋の上下流でハヤを釣る者が4、5人。のんびりと釣り糸を垂れている。橋の下流で赤橋(船小屋温泉大橋)が秋の陽に映えている。この辺りにはよい森とよい水辺がある。
赤橋から上流の八女まで6キロメートルほどクスノキと竹の混成林が延々と続いている。目通し4、5メートルはある無数の巨木が堤防をなしているのである。徳島県の丈六寺裏手の勝浦川の堤防にクスノキが植わっているが、規模においてまったく比べものにならない。
実はこの堤防、三百年ほど前、田尻惣馬という技術者の発案によって築造されたものである。クスノキの根は石を包む蛇篭の役目を負っているのだろう。特に、中洲(中の島公園)のクスノキの密度は濃いようである。よくみると中洲の南側が霞堤になっている。中洲は人造のようである。後年の河川改修によって堤防林の南側に霞堤を造ったものであろうか。惣馬の堤防の築造経緯を調べていないが、船小屋がクスノキ堤防の最下流であることやこの辺りの流路が若干湾曲していることなどを考えると、霞堤は惣馬の着想であったように思う。つまり、洪水時の湾曲部にかかる水圧の負荷を考慮すると、その軽減のために霞堤の着想が浮かんだのではないかと思う。いずれにしても中の島公園は一見の価値がある良い公園である。−平成17年11月− |
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