近畿風雲抄
奈良
民家の風景(大和棟)−県下−
大和棟 生駒山麓や矢田丘陵、明日香或いは奈良県境を越えて京都の山城、大阪の枚方や交野の河内などで大和棟の美しい民家に接することができる。傾斜のある両切妻の白壁の主屋を萱で葺き、煙出を揚げた緩い傾斜の落棟を付け瓦で葺く。切妻の両端に鳩穴(通気孔)が二つ抜いてある。これが大和棟の典型的な外観。
 大和棟の美しさはなんと言っても高塀(タカヘ又はタグリ)とよばれる切妻屋根の両端の飾り瓦と棟仕舞いのあり方に由来する。タカヘは桟カワラを2枚から4枚並べて葺きおろし、瓦の接合部を丸瓦で抑える。タカヘのある家屋をタカヘ造りと呼んだりもする。
 大和棟の「棟」は切り妻の両端をタカヘに造り、針目覆い(四国地方ではホテ)した箱棟がもっとも古式かと思う。現存する大和棟の棟造りは実に様々であり、桟瓦で葺いた置棟の棟なども散見される。屋根の葺き替え時の手間などを考慮していまではこちらの方が主流になっている。それは草葺き屋根一般の傾向のように思う。
 明日香の山すそや生駒の矢田丘陵の集落を歩くと、今なお大和棟の美しい民家に接することができる。大宇陀の安騎野や羽曳野、枚方、高槻、木津川などにも大和棟が残っているが、丹波に近い北摂辺りになると、主屋の傾斜が緩くなり、落ち棟の煙出しが高くなり、装飾性が強調されようになる。なかなか味わい深いものだ。
 大和棟の由来に諸説ある。神社建築の屋根様式が淵源ではないかと思う。神明造りの社殿はスッキリとした美しさがあるが、カマド(クド)の置き場所が問題となる。切妻の主屋の下は田の字の4間取りが普通であるから、クドは置けない。そうすると、どうしても落棟が必要となる。そこは火の気があるから瓦葺にしてという着想ではなかったかと思う。タカヘと落棟の屋根の傾斜がなんとも良いバランスを保っている。そこに大和棟が民家の絶唱といわれる所以がある。−平成19年− 

大和棟の民家(奈良市都祁甲岡町)
大和棟の民家
(奈良市都祁甲
岡町)
甘樫の丘から
飛鳥座神社方
面の民家を望
大和棟の民家
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