奈良
安騎野の風景−宇陀市大宇陀区−
   ひんがしの野のかぎろいの立見えてかえり見すれば
    月かたぶきぬ  〈万葉集  柿本人麻呂〉
安騎野
安騎野
安騎野
 宇陀市の大宇陀区に阿紀神社がある。社名にのこる安騎野は柿本人麻呂が詠った安騎野の故地。本郷川を挟み、神社の南に細長い台地が横たわり、標記の歌碑がある。この台地こそ軽皇子が狩されたところと説かれる。鷹狩りにせよ、弓矢の狩にせよ、見通しのよい台地は狩の適地であったろう。
 神社の北側山麓の民家の佇まいが、安騎野の景観を一層懐かしく、美しいものにしている。大和棟の民家も残っている。また、この山麓から望む安騎野の風景も捨てがたい。宇陀の山中に花開いたのびやかな高原は、飛鳥人ならずとも人々の心を捉えて離さない。のんびりと田園で過ごす日があってもよいだろう。