京都
ヒルガオの咲くころ−綾部市−
 夏のころ、野辺に咲くヒルガオ。夏草にしがみつき頼りなさそうにみえるがしっかりと咲いている。オニユリを夏花の雄に例えるとヒルガオはその対極の美しさがある。
 丹波高原を歩くと、日当たりのよい施肥のきいた茶畑の隅では孟夏のころからくヒルガオが咲き始める。次第に野辺に広がり、盛夏のころ由良川辺りの水路のほとりで咲く。アサガオを含めヒルガオが一番美しい。
ヒルガオ 淡紅色でロート状の花。アサガオと異なり日中に咲く。ガクの外側に2つの包葉がある。同種の多年草で花が一回り小さく、色の薄い花はコヒルガオ。この地方では山裾の原野などで多く見かける花である。
 由良川の河口部の海浜では、入梅前にハマヒルガオが咲く。葉の形状が異なるが花の色やガクや包葉の構成はヒルガオと同じ。ハマヒルガオは茫漠とした海浜に彩りをそえる花。ヒルガオのひっそりと咲く感じとはまた異なる美しさがある。

 ヒルガオやハマヒルガオなどの野草が咲く田んぼや砂浜の風景を故郷の原風景とする人も多いだろう。しかしまた、これらの野草をゴミとみて、清掃の対象としかつ洋花に植え替えて水辺環境の創生などという人もいる。私たちには遠い日に親しんだヒルガオの記憶を辿って、その清らかさをも復元し直す機会が必要なのかもしれない。−平成25年8月−
仙境の集落と野草(オニユリ、ナデシコ)−綾部市−  
市志集落
オニユリ
オオバギボウシ
カワラナデシコ
 由良川の支流・上林川のそのまた支流・畑口川の最上流部に ‘市志’ という集落がある。特産物のフキのオーナー制度が設けられ、春先には訪れる人の多いところ。戸数15戸ほどの集落で、自然豊か。奥丹波の仙境の一つに数えられる美しい集落。畑口川を少し下ったところに ‘市野瀬’ 集落がある。この集落も全く美しい。谷川に沿って涼気が漂い、盛夏もクーラーいらず。夜は冷え込み、掛布団が必需という。
 市志の鎮守の階段下でオニユリが咲いている。濃い黄赤色の花が青い空に鮮やかに映る。オシベが髭のように花外に伸び微かに揺れている。集落の細道行くと右手は岩山の切り通し。崖にオオバギボウシが白い花をつけ、その下でカワラナデシコが咲いている。いつまでも残していただきたたい丹波の桃源郷である。−平成25年8月−
市野瀬集落