京都
ハマヒルガオ−舞鶴市−
 ♪ 君の名はと たずねし人あり その人の 名も知らず 今日砂山に ただひとり来て  浜昼顔に きいてみる ♪
ハマヒルガオ 古関裕而作曲の「君の名は」という歌の歌詞に、‘…今日砂浜にただひとり来て浜昼顔にきいてみる’というくだりがある。ハマヒルガオは日本国中、どこの海浜でも目にすることのできる花。初夏の海浜に咲く花だ。幼児期を海浜で過ごした人には追憶の花としていつまでも心の中で咲き続ける花である。
 北近畿に日本海に注ぐ由良川という川がある。河口部は安寿と厨子王伝説が残る古い歴史が刻まれた土地。一帯は先の大戦前、塩田で栄えたが戦後、塩の専売制が敷かれ塩田は廃絶。いまは水田や落花生畑などに姿を変えた。
 由良川が若狭湾に注ぐ湾口の右岸は神崎という町。夏季の海水浴場で賑わう町である。
 6月初旬、海開きに備え海浜の清掃が始まった。海浜のクロマツ林が美しい。ハマダイコン、コマツヨイグサ、ハマボウフウ、マンテマ、コウボウムギ、ハマナスなど夏草が花をつけ、波打ち際の砂浜でハマヒルガオが咲き乱れている。今日のこの浜には、‘君の名は’さながらの情感が漂っているようにみえる。淡紅色でロート状の花を咲かせ、さく果を結ぶ。葉は丸くて厚く、つやがある。乾燥や海水の塩分に耐える。−平成23年6月−
スナビキソウとアサギマダラ−舞鶴市、宮津市−
 6月上旬、神崎海岸は初夏の野草が美しい。ハマヒルガオ、ハマボウフウなどに交じってスナビキソウが群生し、小さな花をつけている。飛び交う蝶はアサギマダラ。この時期、浜はコマツヨイグサ、マンテマなどの夏草に覆われ花を咲かせるが、アサギマダラは他の花には見向きもせず、スナビキソウ周りを乱舞し、やがて花周りに止る。この食草を求めてアサギマダラは花から花へと海浜を移動し続けるようである。
 50年ほど前、大峰山でアサギマダラを見たことがある。海浜と深山それぞれにアサギマダラが生息し、移動する不思議はどうもその食草と暖流(對馬海流)に相関関係があるようであるがよく解らない。この日、栗田海岸でやはりスナビキソウに群れるアサギマダラをみた。(参考 : ハギとアサギマダラ〈四国風物選〉)
 茫漠とした海浜にカメラを抱えた老人が一人、海人にはその風景の方がよほど不思議に映るに違いない。−平成23年6月−

貝殻の砂をのごいてさらさらと鴎をともに老いびとひとり<閑山>