京都
下見谷の初夏−舞鶴市−
 舞鶴市の西方に下見谷というところがある。そこは赤岩山(標高669メートル)の南麓に深く刻まれた由良川の支流・岡田川のそのまた支流・下見谷川の両岸に田畑をひらき、20戸ほどの集落が点在する。
 初夏のころ、集落に迫る樹林にヤバボウシ(写真左)の白い花(総苞)が咲き、山肌を美しく染め、山裾ではモリアオガエルの卵塊(写真下)が樹上高く、澄んだ田水の上にぶらさがる。
 谷川のせせらぎも心地よく、行くほどにその中流に茶ノ木原(地区)というところがある。地区の高台に目通し約2メートルほどのツバキの大樹(写真下)が谷川を見下ろすようにして立ち、樹下に、六角柱の石面に六体の地蔵尊を刻んだ「六面地蔵尊」を祭った祠がある。丹後地方は地蔵信仰の盛んなところ。集落の入り口などで化粧を施された六地蔵を見かけることも多い。地蔵盆も近い。茶ノ木原では集落や都会で暮らす子、孫の安全を願って、今もこのツバキのもとで地蔵盆が行われるという。谷を隔てて六面地蔵尊の対岸には毘沙門天を祭る堂がある。下見谷は自然に恵まれた古きよき山里である。−平成23年6月−

椿の大樹(下見谷) モリアオガエルの卵
塊(下見谷)
ササユリ(西方寺)

舞鶴市の西部地区のこと
漆原 ヤマボウシ
(宮津市内)
 舞鶴市の西部地区は由良川左岸に当たり、周囲を由良ヶ岳(640メートル)、赤岩山、砥石岳(406メートル)などで囲まれ、重畳をなす山間から流れ出す三つの小河川の流域にそれぞれ西方寺、下見谷、漆原などの集落が所在する。この辺りは未だ純農山村の雰囲気があり、私たちが失った人文の懐かしさを感じさせてくれるところ。
 6月上旬ころ、この地方ではヤマボウシの総苞が満開。西方寺ではササユリが咲いていた(写真上)。まだ肌寒いころ、漆原ではイチリンソウ(写真左)の群落にであったこともあった。この地方には汲めど尽きない自然がある。
 宮津市内の京都府道9号線の街路樹はヤマボウシ(写真左)。1キロメートルほどもあろうか、満開になるとなんともしゃれた雰囲気になるものだ。
センダンの並木(広島市内)