京都
ニオイタチツボスミレ−相楽郡和束町−
やいスミレされどスミレはゆかしきや <芳月>
 庭や道端どこにでも根をおろすスミレ。石垣の間にまで蔓延り、草取りにも厄介なスミレ。しかし花をつけ、かすかに春の匂いを放ったり或いは小さな花弁を風にまかせて心もとなくゆれる姿などみていると、引き抜きかけたわが手を責め結局、ささやかな庭は野草の温床になってしまう。
 良寛は ‘わがやどの軒端に春のたちしよりこころはのべにありにけるかも’ と詠み、スミレをこよなく愛した。そのスミレはたぶん、良寛さんにスミレの好みがあったわけではなく長いへら形の葉をした濃い紫色の普通のスミレでも、野山に最も多いハート形の葉をして唇弁にすじがある淡紫色のタチツボスミレでもない。良寛さんは100種以上あるといわれるスミレの総体に託して、心うきうきとした春たちの喜びを歌い上げる。スミレ歌の絶唱であろう。
 4月下旬のころ和束町の路傍で紅紫色して花の中心部の白色とのコントラストの鮮やかなはっとするようなタチツボスミレ(写真上)を見かけた。直径10〜20センチの株が叢をなし、かすかに芳香がある。ニオイタチツボスミレではないかと思う。野山を歩くとたまにこのような個性豊かな美しいスミレに出会うことがある。これもまた山歩きの楽しみのひとつである。−平成24年4月−

ヤマルリソウ(山瑠璃草)−綴喜郡宇治田原町−
ヤマルリソウ(山瑠璃草) 雑木林や山田の土手、切り通しの路傍などで見かける花。瑠璃色が美しい。時たま、赤紫色の花をつける株がある。花は小さく、直径1センチにも満たないが、はっとする美しさがある。ムラサキ科。−平成24年4月−