京都
枯蘆柿(ころがき)のころ−綴喜郡宇治田原町−
甘干に軒もあまさず詩仙堂  <々>
 金胎寺の紅葉が色づき多宝塔に吹く風にも晩秋の気配が漂い始める11月の初旬のころ、鷲峯山西麓の宇治田原町郷之口辺りで枯蘆柿作りが始まる。田原川やその支流犬打川の段丘にひらけた田んぼに5、6段構えの干柿の乾燥棚(写真左)が建ちあがる。晩秋の風物詩。10メートルにも達する屋根を藁で葺き、筵に竹敷きの床上で柿を乾燥させる。よく似た乾燥施設が九州の背振山中の村々にあるが、背振りのそれは吊るし柿の製法で施設内で自然乾燥させるいわゆる「さわし柿」であるが、田原のそれは筵床でさらに柿に白い粉が生じるまでに乾燥させた枯蘆柿である。京阪神ではよくしられた田原特産の干柿。この辺りは、宇治或いは青谷(城陽市)から郷之口を経て、伊賀上野、大津、信楽に通じる幹道が貫通し、風の道だ。寒風にさらされて枯蘆柿はさらに美味さを増す。
 さわし柿のなま干しのものを甘干と称し、左京区の詩仙堂辺りにも名産地があったものか。々は‘軒もあまさず詩仙堂’と詠んでいる。甘柿が吊るされた懐かしい風景がある。−平成22年11月−