九州絶佳選
佐賀
脊振山麓の晩秋-佐賀市、脊振村-
 陽の光りがしだいに淡くなり、脊振山地の谷あいに冷たい風が吹きはじめるころ、農家の納屋や庭先で家族総出の柿の皮むきがはじまる。晩秋の澄んだ空気に朝夕の冷え込みの厳しい脊振山地の乾燥した気候は、特産の干し柿の生産によい条件を備えている。佐賀市大和町、背振村・・・、猫の手も借りたいような忙しい日々が年の暮まで続く。
 農家の軒先、ビニールハウス或いはプレハブの干し棚に吊り下げられ柿が、晩秋の淡い陽を浴びている。山間の集落が柿色に染まる晩秋の風景は、脊振の絶唱であろう。
 秋の日に脊振の山懐を尋ね歩き、素朴で抑制の効いた心優しい人々に接していると、すがすがしく心まで洗われるようである。
 麦や米を収穫し、吊るし柿を出荷して農家の一年は暮れる。−平成17年11月−