5月下旬のころ、玉川の桜堤から上流に向かって4キロほど行くと、谷川の両岸に文字通り鈴なりの花をつけたエゴノキが見え隠れする。エゴノキは小枝の先に長い柄のある総状の花穂を出す。柄のさきで花は5列し、形状が鈴に似ている。やくの黄色が花のアクセントになっている。なかなか味わいがある。しかし小さな花が無数に咲くエゴノキは、一つひとつの花の個性が隠れてしまい、遠目には葉に白粉をまぶしたように見える。つぶらで清楚な花もその小さきがゆえに目立つことも愛でられることも比較的少なく、その実にえぐみがあるためにエゴノキと呼ばれやや風情にかけるが、見れば見るほど可憐さもある。
山野にありふれた花が毎年、繰り返し繰り返し咲き続け、間違いなく初夏の訪れを告げる。そうした単純な自然の営みに身を馴染ませて、季節の移ろいを感じることこそ野をゆく喜びであるのだろう。玉川はなんともよい雰囲気である。−平成21年5月− |