早春の丹波・丹後路を行くよろこびは、その植物相の豊かさにある。2月、野辺にシロバナタンポポが咲きはじめ、大江山山麓の山路にコウヤミズキがほころび、3月になるとオクチョウジサクラが彩を添える。山路にはオクチョウジサクラの簡潔さが良い。
4月に入るとヤマザクラが野鳥を誘い、山桜がほろほろと舞
い始めると、やがて峡谷沿いの林床にヤマルリソウやラショウモンカズラ、イチリンソウが見えかくれする。
イチリンソウは花柄の基部に包葉が三輪、分枝せず清楚。ニリンソウより一回り大きく、咲き始めのイチリンソウは実に楚々として美しいものである。
丹波・丹後地方ではイチリンソウに比べニリンソウはごく稀に見かける花。逆に府下では山城にニリンソウの群生地が多いことを思うと、イチリンソウは深い山の連なる寒冷地を好むようである。
奥丹波の豪雪地帯で、稀にキクザキイチゲを目にすることがある。葉の形から推してユキワリイチゲではなさそうだ。
潅木が茂る峡谷沿いの傾斜地を往くほどに、たよりない葉の下でイカリソウが木洩れ日を浴び風に揺れている。丹波の山路はなんともよい雰囲気である。
楞厳寺のミツバツツジが満開をむかえている。−平成21年4月− |