由良川の水がぬるむころ若狭湾岸から「いさざ」が上ってきて、丹後の人は春の訪れを知るという。河岸で菜の花が咲く3月の二十日過ぎよりやや早く、ひんやりとした川に腰まで浸し大きなタモですくい獲る。
いさざの上品な味覚は吸い物にしていただくのが極上。テンプラから踊り食いまでこの魚によせる食道楽の興味は尽きるところがない。
博多や有田ではシロウオ、宇和島ではシラウオと呼ばれるこの魚の正体はハゼ科のそれである。丹波のいさざはシロウオであり琵琶湖のいさざとは少し姿かたちが異なっていて似て非なるものであるが丹後ではなぜかいさざである。−平成28年3月−
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