6月1日、由良川のアユ釣りが解禁となった。
9月末まで由良川の釣りは竿釣り、友釣り、網漁など多様。もっとも、友釣り専用区や網漁の漁期(7月1日解禁)を設けるなど遠来の遊漁者に配慮した工夫が凝らされている。事前に漁協に確認されるとよいだろ。
由良川のアユは、古くは山家(綾部)から宮中へ献上され、古代・中世には川北(福知山市)から松尾大社(右京区)へ運ばれた。井伏鱒二が釣行し、魯山人が舌鼓を打ったのも由良川のアユの魅力からだった。
由良川は、川を歩けば足に当たるとも言われた濃い魚影とさわやかな香りに包まれるとまで言われたアユの川。サケやマスが上った由良川。川筋には職漁師も多くいて、田の中干のころ村人を動員し上下流から徐々に網を寄せて獲る漁がおこなわれることもあった。ひと網1トンの漁獲は農民の楽しみであり、山里の貴重なタンパク源となった。
アユ漁の解禁日はかつてはコロコロ、友釣り、毛ばり、網漁など漁法を問わず5月20日前後であった。現在は6月1日午前6時、竿釣りの解禁(網は7月1日)。綾部市内では綾部井関下流の友釣り専用区や以久田橋・新小貝橋下流の瀬は大勢の釣り客でにぎわっていた。「型はまだ小さいです。15分で3匹の釣果、まずまずです。」と釣り客。漁期の終わる9月30日まで由良川はアユ釣りで賑わう。
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小西の茶畑 |
新小貝橋の少し上手で由良川の支流・犀川が流入する。犀川に沿って道なりに小西、鍛冶屋方面を歩く。朝霧がおり田園は幻想的。
幹道から左手の小道を行くと小西の茶畑が山腹を埋めている。寒冷紗に覆われた茶の緑が美しい。玉露の名産地という。茶畑は深い霧と湿潤な気候によって、甘く香りのよい玉露を産むという。満開のウノハナを眺めながら行く小道の散策も良いものだ。
幹道に戻り今田のユリノキを鑑賞。今年もまた良い風景に出合った。今田から10分ほど歩くと鍛冶屋の十字路。村の中心で農協購買部や喫茶店がある。鍛冶屋は「小畑六左衛門」などの民話で知られる山村。ボタ餅を見たことも聞いたこともなかった六左衛門が一山越えた報恩寺の実家でごちそうになったボタ餅の味が忘れられず、家に帰って食べたいと思っていたところボタ餅の名を忘れてしまい、困苦の末夢を実現するという愉快な民話。農協支所前の広場に顕彰碑があるのでご覧になるとよいだろう。
鍛冶屋にもう一つ「三坂女郎話」という民話が伝わっている。小畑村から横山(福知山)城主に嫁いだ奥方が明智光秀に城を攻められ、子を連れ川北から報恩寺を経て実家のある小畑に落ち延びる途中、三坂峠(写真)で明智の追手に捕まりまず奥方が殺され、従者とともに逃げた子は山を越えた鍛冶屋で殺されるストーリー。史話を感じさせるが、血で染まった刀を洗った‘みたち池’が普門院(鍛治屋町)の参道入口付近にあり、三坂峠に通じる道が空山に向かっている。
鍛冶屋は古い歴史のある村。随所に古墳が所在する。空山の裾野の尾根上に円墳が3基。霧に煙っている。慶州の農村を歩いているような錯覚を覚える。この村の普門院は西国観音霊場第16番札所。境内はニリンソウの数少ない奥丹波の生息地の一つである。鍛冶屋には民話とニリンソウがよく似合う。
三坂峠を歩かれるむきには、農協購買部(丹の国農協鍛治屋町支所)前に駐車スペースがあるので同支所に尋ねるとよいだろう。−平成25年6月−
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