結願の寺(大窪寺)−東かがわ市−
 大窪寺は、四国88箇所の88番札所。結願の札所である。本尊は薬師如来。
 徳島の第1番札所・霊山寺から順打ちで遍路すると大窪寺まで約1,500キロメートル。1日20数キロ歩いても2ヶ月ほどかかる。遍路の旅が終わり近づくと、心身の疲れは極まる。高松の屋島寺から志度寺、長尾寺を経て結願札所・大窪寺に近くなるにつれ、緊張の糸が切れるように体調を崩す者も少なからずいた。大窪寺に近づくにつれ路傍に遍路墓が多くなるのもそのような事情によるものだろう。
 長尾寺から遍路して女体山(標高763メートル)の険しい峠を越えると大窪寺。寺は、女体山の山裾に聳える胎蔵ヶ岳の直下に建つ。
 お大師さんの巡錫以来、数えきれない庶民や僧が遍路して、結願の寺で涙したことであろう。境内のベンチに座り、本堂や阿弥陀堂など堂宇を眺めていると、境内に凛として一層清々しい緊張感を感じるのもこの寺が結願の寺ゆえであろう。
 境内の阿弥陀堂の石段下に俳人・山頭火の句碑が立つ。
ここが打留の水があふれてゐる  (山頭火)
本堂
本堂
山頭火句碑
山頭火句碑
 四国遍路の旅に出た山頭火は、雲辺寺、金比羅宮などを巡り、初冬のころ大窪寺に辿り着き、句作。結願寺の御手洗から水がとめどなくあふれ出ている。その水に留まることのない自らの行乞の人生を重ねて詠んだものであろう。句碑の真ん中に「水」の字が大きく彫り込まれている。句碑の方も秀作である。大窪寺を後にした山頭火は、阿波路に入り、霊山寺などを巡り室戸に向かっている。山門を下る山頭火の後姿が浮かぶようである。
 本堂から入母屋造りの大きな山門をくぐり石段を下ると、道路沿いに飲食店が並んである。食事をする人、土産物を買う人などで賑わい、緊張感から開放されたようにほっとした空気が門前に漂う。「八十八そば庵」の中庭に、’暮れても宿がないもずがなく’〈山頭火〉の句碑が建っている。-平成15年-

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