柳井の街並み−柳井市古市町、金屋町−
柳井の街通り 柳井といえば醤油に三角餅、金魚提灯が思い浮かぶ。柳井の街に大方がそのようなイメージをもつのではないか。
 陸上交通が未発達な時代、港町は、海運の優位性によって酒、味噌、醤油、塩など重量物の製造、販売によって栄えるところが少なくなかった。停泊する廻船の乗組員は手ぶらでは国元に戻れない。何か手頃な土産物はないかと街を物色し、買ったちょうちんなどをぶら下げて歩く船乗りのことなどを思ってみたりもする。それはまた、現代の旅人とて同じようなものであろう。
 江戸期に柳井は柳井津と呼ばれた。大内、吉川の時代を通じ栄えた商業都市である。今日でも年配者は柳井を柳井津と称し街の誇りを背負って暮らす人も多い。
 柳井の古市、金屋の街通りを行くと白壁、土蔵造りの町屋が軒を連ね、タイムカプセルのなかを歩くような気分になるものだ。どこか福岡県の吉井町を思わせるところがある。間口が狭く奥行きの長い建前に、入母屋、妻入りの棟が連続する風景がこの町を特徴づけている。
 醤油の醸造蔵は必見であろう。蔵にはいるとよい香りが漂っている。蔵の中二階から仕込み中の巨大な杉樽を見学できる。杜氏の世界に浸れるというわけである。我が国には発酵食品が随分あるが、製造工程は案外知られていない。そうした手造りの世界を垣間見ることによって、ほんまもんの良さもわかるのではないだろうか。もろ味の醸造に2年をかけ、独特な二重仕込みの製法から甘露醤油は産まれるという。
 旧周防銀行本店は明治40年の建築。柳井市町並み資料館になっている。内部、外部とも簡素なよい造りの洋館である。−平成18年6月−

旧周防銀行本店 提灯のさがる醤油蔵