とんど(左義長)の風景−山県郡安芸太田町、広島市安佐北区等− | |||
よく晴れた朝、恐羅漢山の冠雪が青空にきらきらとはえ、つららの下がった渓谷の巌に若水がはじける。ヒヨドリの透き通った声が虚空を刺している。 太田川の源流部の那須、打梨集落をくだり戸河内地区に入ると、パン、パンと大きな爆竹の音。「とんど(左義長)」に火が入り、竹の節々がさく裂する音である。 1月14日、今日は太田川流域の町々でとんどがいっせいに行われているようだ。上流から下流にかけ安芸太田町の土居、箕角、上殿、加計、津浪、善福寺、安佐北区安佐町小浜など地区の河川敷に大勢の人が集まりとんど会場は賑やかだ。 とんどは小正月の行事。注連縄、書きぞめなどを村はずれの空地などで燃やし、残り火で餅を焼くなどして無病息災を祈る伝統行事。1月15日に行われる年中行事である。近年では、防火の問題や準備に手間がかかるなどの理由によってとんどは廃れてしまった。しかし、広島では消防団活動や自治会活動が活発であり、各種行事の維持にも有効に機能しているようである。このことがとんどの継続を可能にしているのだろう。広島のとんどは、15日に近い休日に行うところが多いようである。古色も失われていない。 太田川流域のとんどは、井桁を組みその周りに10メートル内外の青竹を円錐状に立てかける。最上部に竹を1本立て、色紙で飾りをめぐらせるところもある。安芸津、竹原や島嶼部のとんどは多層塔に組む。備後のとんどの形状は複雑である。太田川流域の山県郡()あたりのとんどは、飾り付けをすることはなく簡素なつくり。注連縄などは井桁の内外に納め、とんどまわりに竹先に挟んだ鏡餅や切餅を立てかけ、大火や残り火で焼く。竹棚に竹筒を立てかけ、中に酒をしのばせて大火で燗をしていただく野立ての酒は格別であろう。汁物やぜんざいをふるまう地区もある。こうして人々は、1年の無病息災を祈るのである。−平成19年1月− |
|||
|
|||
|
|||
|
|||