滋賀
大戸川のコアジサイ−甲賀市信楽町−
大戸川のコアジサイ コアジサイは水辺の木漏れ日を好む花である。草のようで樹木。初夏の花。倒木の陰や樹林の下草をかき分けるようにして咲いている。か細く長い枝の先に淡い青紫色の毛玉のようなかすかな花をつける。雨上がりの樹下でこの花に出会うと、鮮烈な命の伊吹を感じる。また密生したコアジサイの群落に入ると、心身が浄化されるような気分になるのもこの花の気品さゆえであろう。樹高は1〜2メートル、装飾花はない。
 信楽高原鐵道信楽駅から数キロのところに、鶏鳴の瀧がある。落差は6メートル。そこは笹ヶ岳山麓から流れ出る大戸川の源流域である。暗幽とした大戸川の峡谷はよほどコアジサイの適地とみえる。瀧への山道脇に、或いは樹林の斜面にコアジサイが咲いている。下刈りの終わった峡谷の急な斜面にコアジサイの群落をなしている。よい光景に出会った。
 いったいに、信楽やその南部の南山城村一帯は高原をなし、網の目のように峡谷が発達している。その流域には四季を通じ豊かな自然がある。初夏にはウツギ、エゴノキ、タニウツギ、コアジサイなどが観賞できる。−平成20年6月−

大戸川のコアジサイ