富永円満寺の鐘−伊香郡高月町井口− |
近江路には俵藤太伝説のある石山寺鐘や三井の晩鐘で知られる園城寺旧鐘など随分、多くの名鐘があるけれども、有銘の梵鐘中で最も古いものは湖北の己高山円満寺鐘(写真左)である。総高約117センチメートル、口径約66センチメートルの鐘である。鐘楼に収まり、上帯部と下帯部の口径比率が大きくやや下方に開いており、朝鮮鐘とは異なる和風の趣がある。寛喜3(1231)年の記銘があり、池の間に10行92文字の刻銘がある。この鐘はもともと比叡山延暦寺の所領富永荘園の預所であった円満寺に掛かっていたものである。寺は惣山之七箇寺の一つに数えられた湖北の有力寺院であったが、衰微がはなはだしく、今は日吉神社境内の一隅に鐘楼を見出すばかりである。願主は教西、浅井氏嫡男盛助や結縁衆、鋳師は土師宗友である。同人は讃岐千光院鐘の鋳師として知られている。音色も大変よい。鐘楼のある井口地区の東側が雨森地区である。かの芳州も朝な夕なにこの寺の鐘の音を聞くこともあったろう。−平成21年7月− |
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