琵琶湖に注ぐ長命寺川の河口部に長命寺港がある。停泊するヨットの白帆が美しい。
港の前は長命寺。湖産の魚貝の佃煮などを売るみやげ物店が並ぶ参道を行く。808段もある長い石段を登ると伽藍の寺域に至る。本堂、三重塔などがよい配置で並ぶ。眼下に琵琶湖をのぞむ湖国らしい寺院である。
長命寺は西国霊場31番札所。近江西国霊場33か所中の21番札所である。寺伝は聖徳太子の開基と伝え、本尊は十一面千手観世音菩薩。打出唱文に「南無大慈大悲、観世音菩薩。種種重罪五逆消滅。自他平等、即身成仏。」とある。背に南無観世音菩薩と墨書して、白衣に菅笠、手甲脚絆姿の遍路は、西国めぐりの者であろう。額ずく背に久遠の祈りがある。一人また一人、お遍路さんが長い急坂を下っていく。
琵琶湖の別称は「鳰之湖」。カイツブリが住みなす水郷の葦辺はもっとも琵琶湖らしい風景であった。しかし、近年、湖岸部の干拓が進み、水郷は次第に姿を消した。水郷はもはや近江八幡の西の湖周辺や長命寺川流域などでしかみられなくなった。
初夏のころ、湖岸周りのムベ、タニウツギの花が美しい。湖上に浮ぶ孤島は沖島。長命寺港近くの堀切港から定期便がある。−平成22年5月− |
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